鳥居の基礎知識

鳥居の起源

鳥居の役割は、神の領域と人間の住む俗界とを区別することだとされています。つまり、神域に入るための門です。『鳥居』の起源には諸説あり、古代の神話を記した『古事記』では、「鳥が止まった木」を鳥居の起源としています。他にも、「トラナ」と呼ばれるインド仏教やヒンドゥー教の寺院の門が日本に伝来して鳥居となった、という説もあります。名前の語源についても、鳥居の上が「鳥の居やすい場所」だからという説や「下を通り入る」という説など様々。
現在、鳥居の素材としては木、金属、鋳物、コンクリートといろいろありますが、石鳥居は平安時代後期には建てられていたようです。件数が増えてきたのは、平安末期から鎌倉時代にかけてであると想定されます。石材加工技術が発展し、道具も進化した時期です。同時期には、石仏や多宝塔の製作も盛んになりました。弊社でも江戸時代より数多くの石鳥居を製作していますが、記録に残るものは明治
38年の首途八幡宮石鳥居と明治40年の粟田神社石鳥居の建立からです。

鳥居の素材

鳥居の素材は木製が多く見受けられますが、最近は木材の値段が高騰してきている上、耐久性が高い石の鳥居に建て替えることが多くなってきています。鳥居に使用される石材は、長尺物が取れて、石目が細かい花崗岩が好まれます。昔は、関西地方を中心に岡山県の北木石がよく使われていました。現在では、北木石は産出量が減ったため、使用されることがなくなりました。現在は茨城県石岡市のやさとみかげや、愛媛県今治市の大島石などが使用されます。全体的に白御影石が選ばれることが多く、ビシャン仕上げが最も一般的です。

鳥居の種類

鳥居は大きく分け、神明型と明神型の2つに分けられます。神明型は余計な装飾のない、シンプルな造り。柱、笠木に丸材を使うことが多く、反り増しがありません。全体的に直線的な形になっていて、柱にも転びがなく、地面に対して柱の内側が直角に建てられます。その形は、歴代天皇陵の鳥居をはじめ、伊勢鳥居、靖国鳥居などに代表されます。
一方、明神型は笠木の下に島木が付き、上向きに反り増しがあります。柱石は内側に転びがあり、貫も貫通しているものも多く見られます。良く神社に建てられているのが、この明神型鳥居です。笠木と貫の中心に額を配し、柱の上に台輪や裾に亀腹などの装飾性がある鳥居も多く見られます。

宮内庁/天皇陵(神明型)施工年表(抜粋)

2008(平成20年) 清寧天皇陵鳥居 改築(大阪府)
継体天皇陵鳥居 改築(大阪府)
飯豊天皇陵鳥居 改築(奈良県)
開化天皇陵鳥居 改築(奈良県)
2007(平成19年) 光仁天皇陵鳥居 改築(奈良県)
2006(平成18年) 冷泉天皇陵鳥居 改築(京都府)
2004(平成16年) 文徳天皇陵鳥居 改築(京都府)
孝元天皇陵鳥居 改築(京都府)
隆子女王墓鳥居 改築(三重県)
2003(平成15年) 用明天皇陵鳥居 改築(大阪府)
2001(平成13年) 後亀山天皇稜鳥居 改築(京都府)
2000(平成12年) 光明天皇陵鳥居 新設(京都府)
1997(平成9年) 尊良親皇墓他1基鳥居 改築(京都府)
1995(平成7年) 大枝陵鳥居 改築(京都府)
1993(平成5年) 村上天皇陵鳥居 改築(京都府)
1990(平成2年) 宇治陵鳥居 改築(京都府)
1983(昭和58年) 恒武天皇皇后陵鳥居 改築(京都府)

明神型鳥居 施工年表(抜粋)

2021(令和3年) 雙栗天神社 鳥居 新設(京都府)
和多都美神社 大鳥居 新設(長崎県)
2019(令和元年) 長岡天満宮 大鳥居 耐震補強・飾台座石 新設(京都府)
元大井神社 鳥居 新設(京都府)
若宮八幡宮 鳥居 新設(京都府)
2016(平成28年) 城南宮 鳥居 補修(京都府)
2015(平成27年) 八坂神社 摂社鳥居礎石 新設(京都府)
2011(平成23年) 平安神宮神苑 鳥居 新設(京都府)
2010(平成22年) 松尾神社鳥居 修復(京都府)
2009(平成21年) 護王神社 鳥居 新設(京都府)
2007(平成19年) 中山寺 鳥居 移設(兵庫県)
2005(平成17年) 加茂神社 鳥居 新設(京都府)
2004(平成16年) 平安神宮 大鳥居 改修(京都府)
2003(平成15年) 神田神社 鳥居 新築(京都府)
2001(平成13年) 晴明神社 鳥居 移設(京都府)
1998(平成10年) 長岡天神 大鳥居 新設(京都府)
1995(平成7年) 石清水八幡宮 鳥居 修復(京都府)
1936(昭和11年) 鶴ケ岡八幡宮 国宝大鳥居 修復(神奈川県)
1935(昭和10年) 豊国神社 鳥居・社標石 新設(京都府)
1934(昭和9年) 宗像神社 南鳥居 新設(京都府)
1917(大正9年) 伏見稲荷大社 鳥居・狐像 新設(京都府)
1907(明治40年) 粟田神社 鳥居 新設(京都府)
1905(明治38年) 首途八幡宮 鳥居 新設(京都府)

 

新築工事

石鳥居を建てる時には、先人の知恵を活かしつつ、現代の技術を用いることが大切です。もちろん、建てる場所の状況に応じて、工法も異なります。昔は、木製の三又が使われましたが、現在は安全と効率性を考慮して、移動式のクレーンを使用することが多くなりました。大きな鳥居の場合は、10t以上のラフタークレーンを使用することもあります。

石鳥居は、バランスが大切

加工においても、施工においても、石鳥居にとって一番重要なことは、バランスです。例えば、鳥居の中央に横長に伸びる「貫石」は、鳥居の脚である、左右の柱石がバランスよくせめぎ合い、それらに挟まれることで、固定されています。柱石も、貫石も、太さや長さが正しい寸法でないと、適切なバランスが維持できず、倒れてしまいます。そのため、石を加工する時には、それぞれの部材が合わさる部分や、ホゾ穴の寸法が正確であることが、とても重要となるのです。

施工の際は、長年の経験によって培ってきた工法により、竣工後も長く安全にあり続ける石鳥居を目指します。石鳥居がバランスよく建ち続けるために、転びの角度や接着の工法など、様々な要素に工夫をしています。例えば、柱石の下に、大きな根石を埋設することがあります。これは古い石鳥居によく見られる工法です。地震が起こった際に、根石自身が揺れることで、鳥居本体にかかる荷重を分散し、中央の貫石や両端の柱石が折れてしまうことを防いでいると言われています。その他にも、基礎に予め開けられた穴に柱石を差し込み、周りを砂で突き固める工法もあります。その場合、基礎を完全にコンクリトで固定させることはしません。

上質な石鳥居を建立するために

 安全で、質の高い石鳥居を建立するためには、安心の品質の国内加工と、確かな技術を持つ職人による施工が不可欠です。中国工場で製作することも可能ですが、合わせ部分の寸法に誤差が生じていたり、仕上げが粗かったりとした問題が発生することが多くありました。鳥居の製作にあたっては、鳥居を製作することに慣れた、国内の産地による加工をお勧めします。また、現場の状況に応じた柔軟な対応も必要な石工事です。いかに効率よく安全に行うかが大切です。多くの石鳥居の建立に携わってきた熟練の職人による施工で、安心して、長く使い続ける石鳥居を建立します。

施工事例

【長岡天満宮 大鳥居新設工事】

平成10年に建てた長岡天満宮の大鳥居は、笠木の長さ12m、総高9.75m、総重量50tもあました。そのため、施工には、特大のクレーンが使われました。鳥居を建てる場所が小高い土手の上にあるため、初めに160tのトラッククレーンを使い、石鳥居と22tラフタークレーンを上げてから、鳥居が建てられました。

和多都美神社 石鳥居新設工事】

 

令和3年に建てた長崎県対馬市の和多都美神社の石鳥居は、海の上に建つ、海中鳥居です。本来なら船上クレーンの使用も想定していましたが、潮の満ち引きによる作業時間を考慮し、新たに施工の為のアプローチを作り、ラフタークレーンを使用した施工を行いました。

 


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改修・移設工事

改修工事

境内に既に建てられている既存の石鳥居の改修も承ります。例えば、笠や外貫など、石鳥居の一部が、劣化や外的要因により、落下する可能性がある場合、そのまま放置しておくと、大変危険です。柱石が以前より傾いている、これまで無かったヒビが入っているなど、石鳥居に関して、何かお気づきの変化がありましたら、お気軽にご相談ください。その他、石洗いや一部補修、古色付けも承ります。

施工事例

【豊国神社 石鳥居改修工事】

平成30年(2018年)、京都市豊国神社の大鳥居の改修工事を行いました。外貫の1本が、劣化により落下。約10mもの大鳥居のため、施工の為の足場を組み、ラフタークレーンを使用した据え直しを行いました。既存の外貫は一部補修を施し、再利用をしました。設置の際、外貫を下から支える補強金具を特注で製作し、柱石に固定させました。この補強金具には、瓢箪型がくり抜かれています。これは、豊国神社の御祭神である豊臣秀吉の馬印がひょうたんであったことから、神社様が大切にされているシンボルマークです。ただ改修するのではなく、お施主様の歴史的、文化的背景を基に、お客様一人ひとりに相応しいご提案をすることを大切にしています。

長岡天満宮 石鳥居改修工事】

長岡天満宮の大鳥居は、総高9.8メートル、最上部の笠木は幅12メートルと、国内最大級の石鳥居。大阪北部地震で被災し、正面右側の柱石下部に亀裂が入ったこの鳥居の復旧工事を行いました。長岡天満宮のシンボルとなっている、既存の大鳥居は残したいという宮司様の強い思いを基に、既存石を生かしながら耐震強度を強めた、意匠性の高い設計を採用。柱石の周りをコンクリートで固めた上に、御影石の柱石を設置し、形は従来の饅頭型ではなく、八角形の藁座にしました。伝統的な建築技法と現代の感性を取り入れ、他にはないデザイン的な石鳥居に再成されました。


移設工事

境内の拡張や整備事業などに、既存の石鳥居を移設する場合もあります。移設作業は、既存石を傷めることなく解体する必要があるので、特に慎重に石を扱わなければなりません。セメントによって固定されたホゾ部分を少しずつ叩き、徐々に石と石の縁を切っていきます。石を叩いた時の音や、感覚を基に取り解いていくため、確かな経験実績のある職人による施工が必須です。

施工事例

 平成13年(2001年)、京都市上京区の神社にて、境内拡張に伴う石鳥居の移設工事を行いました。ラフタークレーンを使用した施工でした。また、平成19年(2006年)には、兵庫県の神社にて、移設工事を行いました。付近の道路の位置変更に付随する移設工事で、こちらは大三又を使用した移設工事でした。

撤去工事

古い石鳥居を新しく取り換える場合や、参拝者が少ない場所で複数の鳥居が設置されている場合など、既存の石を撤去したい場合もご相談ください。経年劣化により、石が風化し、付近を通ることが危険になった場合に、改修ではなく、撤去を選ばれるお客様もいらっしゃいます。そのまま放置してしまうと、思わぬタイミングで崩れ落ちる可能性もあるので、大変危険です。

【天神社 石鳥居撤去工事

令和2年(2019年)、滋賀県大津市の神社にて、既存石鳥居の撤去を行いました。車両が入れない場所であったため、カニクレーンを使用しました。取り解き時に急な倒壊をしないように、カニクレーンで笠石を吊り、支えながら、それぞれの石を取り解いていきました。撤去した石は、キャタピラーを使用して、搬出しました。