石造美術について
わたしたちが伝えたい“石造品”は、今でもごく普通に私たちの周りで見られる石灯篭や石仏、狛犬、石碑、石塔などについてです。これらの石造品はあまりにも身近で見過ごされているものばかりです。
特に私の住む京都とその周辺エリアは神社仏閣が多いのですが、専門書を見なければ目の前の石仏や五輪塔が重要文化財だなんてわかりません。そんな“路傍の石”ともいえる石の創作物に敬意を表し、「石造美術」という括弧でくくりながら、個々の特徴などを別項で紹介いたします。
“石造美術”と呼ばれるような石造品が多く造られたのは、仏教が隆盛した鎌倉時代です。この時に石工の加工技術や道具も進歩したと言われています。仏教がさまざまな宗派を生み、貴族階級から武家、庶民へと信仰の輪が広まった時代だからこそ、石造品にも多くの“需要”があったと言えます。そういう意味では、人々の信仰心が希薄な現代に、石造品に対する急激な“需要”の波がくるとは思えません。
でも私たちは「仏の都」である京都に住んでいるおかげで、奈良、滋賀のエリアも含めて、身近に多くの模範(本歌)となる素晴らしい石造美術に出会うことができます。また幸いなことに、長年にわたり京都だけでなく岡崎、庵治、出雲と各地の技術の高い石工さんと協力関係をとらせていただいております。
このような環境に恵まれた私たちは、「京都の石屋」として少しでも日本人の手による素晴らしい“石造美術”と呼べる石造品をこの世に送りだし、後世に遺せるお手伝いができればと心から願うとともに、ご提案をいたしております。