社寺建築と石工事の関わり
日本に社寺建築が造られ始めたのは、仏教が伝えられた6世紀に始まります。飛鳥寺をはじめ多くの建築物が建てられてきましたが、その時に石工の技術も大陸から伝来されたものと言われています。石は大切な木造の建造物を地震や水害から護り、また建物の荘厳さを際立たせる素材としても最適だった思われます。建築様式が飛鳥、白鳳、天平、弘仁・貞観、和様と変わり、禅宗様、大仏様、折衷様とさまざまな様式が現れても、石が木造建築の中で求められている役割は変わりません。日本は「紙と木」の文化と言われますが、実はその文化を支えるものに“石”が大きな役割を担っていた、とも言えるのではないでしょうか。
現在残されている寺院や神社の参道や建築物を支えている基壇、礎盤、または床の四半貼りを見ても共通の形が見られます。明らかに寺院と神社では建物の形は異なるのに、基本パーツの“石”に共通点が多いことに、神仏習合的な流れや日本人の合理性を感じ、面白さがあります。神仏習合といえば、今でもお寺の境内に鳥居や玉垣が建てられている例も少なくありません。例えば、弘法大師が雨乞いをしたことで有名な神泉苑は、真言宗のお寺ですが立派な鳥居と玉垣があります。また、聖徳太子の建立した四天王寺にも大きな石鳥居があります。
社寺建築の石仕事と一括していますが、実際は神社建築と寺院建築とに別れます。ただ上記のように多くの部分で、石の部分の作りは共通のものが見られます。
共通点の多い石パーツとしては‥
参道、石階段、石垣積み、橋、基壇、基礎石、礎盤、束石、狭間石、地覆石、葛石、床の四半貼り、標石などです。
独自の石パーツとしては…
神社は、鳥居、玉垣、狛犬、手水鉢、宮灯篭など
寺院は、鐘楼石積み、石碑、石仏、仏足石、灯篭などです。
使用する石材について
基本的には、社寺建築の石工事や石造品には白御影石が使われています。(古建築の束には自然石が見られますが)昔は加工技術の問題や、地域によっては石が採れる産地が近いという理由で、柔らかな砂岩や安山岩が使われたこともありますが、今は白御影石が主流です。
この白御影石も関西では、国産の北木石が良く使われましたが、現在は産出量と価格の問題で北木石に似た、中国産の白御影石が使われています。中国産は石材も加工費も安く、限られた予算の中ではとても重宝ですが、発注から仕上がりまで約1ヶ月近くかかることと、どうしても加工技術にムラがあることに大きな問題があります。特に小叩きなど精緻な加工は、目が均一でなく、叩き方が粗かったり、平行でないなどの問題があります。中国で作ったあとに、国内での二次加工が絶対に必要です。
建築現場の石工事について
建築現場における石工事は、昔は大工さんと同じように、素屋根を組んだ作業場を建築現場に作り、ある程度小割りした石を使い、ノミやセットウで現場加工していたと聞きます。その後、時代が過ぎ工場で石材の加工が可能になってからは、工場で加工したものを現場に搬入し施工だけするようになりました。弊社でも10年程前までは自社工場で、仕入れた大きな石板を切削し、細かな加工を搬入していましたが、現在は全て生産地の工場で製作したものを使い施工しています。
芳村石材店の石工事について
石材の製作については、初めに設計士の先生が描かれた建物の設計図を基に、営業担当が石の施工図面と加工図面をCADで作成します。そのうち加工図面は生産地の工場に送り加工されます。また施工図面は施工技術者(石工)に渡されます。
私どもの営業担当は全員、現場調査→見積り出し→図面作成→工場発注→検品→現場施工管理まで、一貫して行っていますので、問題なく品質管理も行き届いていますので安心です。また施工内容に応じた経験豊かな石工を選び、作業能率と完成度を高めることに力を注いでいます。そのことが“お客様大事”を家訓に、「京都の石屋」として続けてきた店の方針であり、企業姿勢だと考えております。